『リング・オブ・ファイア』に見る第4次ハリコフ戦

   ドイツ軍とソ連軍の作戦研究
   付録ゲーム『リング・オブ・ファイア』作戦研究 (14号)


第4次ハリコフ戦とはいかなる戦いであったのか?
 ルミヤンツェフ作戦はチタデレ作戦の失敗によって攻守逆転し、主導権を握ったソ連軍が行った最初の大規模攻勢作戦であった。物質的なあらゆる面でドイツ軍を凌駕していた彼らは、初めて戦車兵力を集中使用する。ソ連側の発表によると、この作戦における砲兵、戦車兵力はドイツ軍の6倍も優勢で、突破地点には1キロメートル当たり230門の砲(ロケット砲含む)と70台の戦車が集中的に投入されたということである。
 しかし、ドイツ軍の卓越した戦車部隊の戦闘力を見逃してはならない。彼らは幾度となく繰り返されるソ連軍の攻勢をことごとく粉砕し、8月22日に撤退命令が下るまでハリコフを守り抜くことに成功した。第3装甲師団に至っては、兵員の約半数が鉄十字章を与えられていたというのだから驚きである。
 史実はゲームの展開の一例にすぎない。我々はこうした戦いの推移と特徴を捕むことによって、プレイの指針を学ぶことができる。その時、何が成功し、何を失敗したのか、そしてなぜ失敗したのかを知る惜しみない努力が、その者のプレイングレベルを向上させるのである。
 両軍共に戦車兵力の運用こそが、この戦いの、そしてボルシェヴィキの街の帰趨を決めることだろう。今回は本誌11号に引き続いて、『リング・オブ・ファイア』のキャンペーンシナリオの作戦研究を行ってみたい。

モメンツ・イン・ヒストリー社の人々
 本誌11号でも少し述べたが、ウルリヒ・ベルネマン氏が代表を務めるドイツのゲームメーカーである。彼は本誌8号にアフター・アクション・レポートが掲載されている『Black Day of German Army』のデザイナーであり、S&T誌『The Tigers Are Burning』、本誌付録『電撃戦1941』や『スターリングラード攻略』など数々のシミュレーションゲームを手掛けた優秀なディベロッパーでもある。これらのゲームに与えられた高い評価は、いまさら語る必要はないだろう。
 アメリカ本国では、ベス・キーマンとジャック・グリーンが共同経営するAdmiralty House Publicationという会社が、モメンツ・イン・ヒストリー社の総代理店として活動している。
 モメンツ社製品のユニークな特徴の一つに、ルールブックのTalking Versionが発売されていることが挙げられる。60分のカセットテープにはデザイナー直々の実際のプレイに沿ったルール説明が録音されており、ゲームのデザイナーズノートや戦略にも触れている。アメリカ国外への航空便でも7.95ドルと非常にお買い得なので、いかがであろうか?

勝利条件の確認
 キャンペーンシナリオの勝敗に関係する町はアハツィルカ、ヴォゴダホフ、ベルゴロド(各15VP)、ハリコフ(50VP)、クラスノグラード(25VP)、ポルタワ(30VP)の6つである。ソ連軍はゲーム終了時に50VPを獲得していれば勝利する。
 ゲーム中盤までには、最初の3つの町は間違いなくソ連軍に占領されている。合計45VPである。残りの5VPはその他の町を占領するか、盤外突破によって獲得するようにデザイナーがソ連軍の攻勢を誘導しているわけである。
 ソ連軍はドイツ軍の増援部隊が出揃うまでに、地図盤西端の29XX列以北の森から歩兵ユニットを突破させてVPを獲得するというセコい手がある(3VP/ユニット)。ゲーム序盤のドイツ軍には、この突破に対応できるほど余裕はない。
 この結果、2ユニットだけ突破させたソ連軍は、ゲーム終了までに上記3つの町を守り切ることができれば勝利する。南方に突破しなくても、ハリコフを占領しなくてもゲームには勝てるのである。
 これらの町の防衛では歩戦連携が可能になり、またソ連軍の最大の弱点  機動力  も問題にならない。豊富な補充ポイントも心強い味方である。また、地理的に見てもこれらの3つの町は、ドイツ軍の予想攻撃方向に対して有利な地形が存在する。
 この勝利条件の設定が「『リング・オブ・ファイア』のドイツ軍は勝てない」と言わしめる原因を作っている。要するに、勝利条件の設定が悪いのである。
 このアンバランスな勝利条件を改善するため、これまでにいくつかのオプションルールが発表されている。本誌別冊のルールブックに掲載されているので、うまく利用して頂きたい。

ゲームテクニック
 ZOCリンク:このテクニックは『リング・オブ・ファイア』においては、基礎中の基礎といえるものである。その特徴はヘクス自体とヘクスサイドの両方にZOCを持つことにある。
 図1を参照して頂きたい。ZOCリンクでは守りたいところに直接ユニットを置いてはいけない。この場合、ゴロフチノに直接ユニットを置いて防御すると、おそらく戦闘後前進ですぐに進入されてしまうだろう。
 図1のようにユニットを配置すれば、ABのZOCリンク(橋の架かっているヘクスサイド)が崩壊しても、ADまたはBCのZOCリンク(ゴロフチノのヘクス自体)が敵の進入を阻む。また、ソ連軍がAまたはBのドイツ軍ユニットを除去したとしても、戦闘後前進ではゴロフチノに進入することはできない。
 このテクニックは、特にドイツ軍にとってハリコフ防衛の成否を大きく左右することになるだろう。
 また、他の多くのゲームとは違い、対辺の2ヘクスからでは間に挟んでいるユニットに対してZOCの効果を維持できない。ユニットを拘束するには3方向から包囲しなければならないので十分に注意しよう。
 歩兵ユニットに対する航空爆撃:実はこれ、本誌11号のアフター・アクション・レポートではお目見えしなかったが、かなりキツイ裏技である。あの時のソ連軍航空ユニットの目標は、もっぱら戦車ユニットであった。たしかに、その効果は絶大である。ティーゲルやパンテルがポンポンとポップコーンのように吹っ飛んでいく(後に発表されたオプションルールでは、航空爆撃は1ヘクスに3枚まで、損害は防御側プレイヤーが選択して適用できるという制限が加えられたので、歩兵ユニットを一緒にスタックさせておけば戦車ユニットの損害を軽減できる)。
 問題は、ソ連軍がドイツ軍歩兵ユニットを航空爆撃する場合である。多くの場合、ドイツ軍はドネツ河に架かる橋の周辺以外は予備部隊を置かず1線防御する。理由は簡単。この方面にユニットを回す余裕がないからである。ソ連軍はそこを狙って、第1ターンに航空爆撃でドイツ軍ユニットを除去し、予備移動で渡河する。うまくいけば、ドイツ軍ユニットをいくつか包囲できると言う寸法である(補給状態は戦闘の直前に判定され、補給切れの状態で除去されたユニットは再編成できない)。
 たとえ、2線防御しているところでも、通常戦闘で第1線、航空爆撃で第2線を破れば、予備移動で突破できる。それでは3線防御?と考えるが、ゲーム開始時のドイツ軍戦力は2線防御を張るのにも、アップアップなのである。
 予備移動による戦車ユニットの防御:ソ連軍戦車ユニットは戦車戦闘ではドイツ軍装甲部隊に大きく劣るものの、通常戦闘においては非常に大きな戦闘力を持っている。その移動には、特に歩兵ユニットと連携しているゲーム序盤は細心の注意が必要である。自軍プレイヤーターン終了時に戦車ユニットが突出した形になっていると、続くドイツ軍プレイヤーターンに必ずといっていいほど反撃を受けてしまう。
 通常戦闘フェイズに戦車ユニットが攻撃に参加する場合、あらかじめそれらの後背に数枚の歩兵ユニットを予備にしておくとよいだろう。彼らが予備移動で戦車ユニットの前に壁を作れば、友軍戦車ユニットは88o砲に晒されることはなくなるのだ。
 交通妨害:両軍ともに、非常に重要なテクニックである。この交通妨害を効果的に使った方が勝利すると言っても過言ではないだろう。航空ユニットの再重要任務と考えるべきである。
 例えば、ドイツ軍がヴォゴダホフの北側に3枚の航空ユニットを並べると、ソ連軍機械化ユニットはそのヘクスに入るために+4、歩兵ユニットは+2の追加移動力が必要となる(両者の移動力はそれぞれ8と4である)。迂回するにしても、その両側には河川が流れている。少なくとも1ターンは時間を稼げるだろう。
 他にも、ドイツ軍プレイヤーは突破を警戒して道路と橋の封鎖は常に念頭に置いておかなければならない。
 ソ連軍はドイツ軍の予備移動を妨害することが主任務となる。攻撃するヘクスに置けば、そのヘクスに増援は辿り着けない(一部例外あり)。つまり、戦闘が計算できるようになり、手痛い反撃を受けることがなくなるのである。
 第1〜2ターンのアハツィルカ〜ベルゴロド間の道路ヘクス、中盤以降のハリコフの中心ヘクス(1132)などもポイントなので、置き忘れのないようにしたい。
 どちらにしても、集中、かつ継続した使用が効果を大きくするポイントである。プレイヤーの技量と経験が大いに問われるところなので、じっくりと研究してみてほしい。

初期配置を考える
 それでは、ユニットとマップを準備して頂こう。ただし、ユニットはカウンターシートから切り取る前にコピーしておくこと。こうしておけば、ユニットを紛失しても代わりを作れるし、両軍兵力の一覧としても活用できる。筆者の場合、マップもコピーセンターなどで縮小してもらい、それぞれのゲームごとに戦略などを書き込んだ虎の巻を作っている。 ルールブックには、初期配置は最初にソ連軍歩兵ユニット(55個)、それからドイツ軍の全てのユニット(69個)、ソ連軍戦車ユニット(53個)の順と規定されている。両軍ともほぼフリーセットアップであるが、最外郭の要塞ヘクスに沿ってユニットまたはZOCリンクを繋げなければならないので、配置ヘクスは自ずと決まってくる。この制限を満たすためには両軍共に36個のユニットが必要である。
 この時、ドイツ軍プレイヤーは前述したようにZOCリンクの特徴をうまく利用して自軍ユニットを配置するように。例えば、Shapino(3037)、Stavgorodok(3024)、Boramylaの北(3115)、Khotomylaの西(1041)などには絶対にユニットを配置してはいけないのである。
 また、3種類ある狙撃兵師団のうち、特に12個の親衛狙撃兵師団の位置を確認しよう。十中八九、そこが突破地点である。その方面には残っているユニットで第2線を張ろう。突破地点に確信が持てない時は、Vorskla河に沿った後方の要塞ライン(2739〜3311)まで下がって第2線を張るのも一考である。とりあえず道路は全て封鎖する必要があるので、各自研究して頂きたい。
 ちなみに前述のTalking Versionでは、デザイナーのジョン・デッシュ氏はソ連軍親衛狙撃兵師団ユニットを3133、3132、3031、3030、3029、3028、3027、3026、3126、3125、3124に配置すると語っている。
 各装甲師団ユニットも配置ヘクスが指定されているが、戦略移動の可能性を考慮して道路ヘクスに配置する方がよいだろう。
 一方、ソ連軍も9個の独立戦車ユニットはドネツ河の東側に配置すべきである。わざわざルールに特別に規定されているのだから、なにか訳ありのはずだ。間接アプローチの原則に従っても、この方面に幾許かの戦車兵力を配置する方が得策であるのは言うまでもないだろう。

両軍の戦車部隊を比較する
 表1を見て頂きたい。これはドイツ軍の戦車戦闘力4のユニットとソ連軍の戦車戦闘力1のユニットを比較したものである。一番上の1〜10までの数字はソ連軍の戦車ユニット数を表わしている。例えば、6枚のソ連軍戦車ユニットが1枚の戦車戦闘力4のドイツ軍戦車ユニットを攻撃した場合、ソ連軍は50%の確率で1ステップロス、16.7%の確率で2ステップロスの損害を被る。残ったソ連軍戦車ユニットは、ドイツ軍戦車ユニットに40.5%の確率で1ステップロス、25.1%の確率で2ステップロス(除去)の損害を与えることができるのである。しかし、損害を与えられない確率も34.4%存在する。
 戦車ユニットの戦車戦闘力はステップロスしても減少しないので、集中攻撃によって一回の攻撃で除去するのが理想である。だいたい6対1で同等の攻撃力と考えればよいだろう。

ハリコフは陥ちるのか?
 『リング・オブ・ファイア』における最大の関心事と言えば、もちろんハリコフ攻略であろう。はたして、ハリコフは陥ちるのか?ここを奪えばソ連軍は99%勝てるのだから、力も入ると言うものだ。
 そして、この答えはゲームに反映されている両軍の戦闘部隊の柔軟性を比較し、その他の条件を考慮することで導き出せる。
 1ヘクスのスタック制限は、両軍とも4ユニットである。ただし、ソ連軍狙撃兵師団は3ユニットと数えられる。
 ドイツ軍歩兵ユニットの4枚スタック(歩兵ユニットは50個以上あるので、ハリコフの市街戦で4枚スタックしてくることは疑うべくもない)の戦闘力は概ね16〜18である。これにほとんどの場合、町や要塞、河川の効果が影響する。
 対するソ連軍狙撃兵師団の戦闘力は最高で7、これに戦車ユニットをスタックさせても戦闘力は12にしかならない。3ヘクスから攻撃できれば、36戦闘力。うまくいけば2対1だが、2ヘクスからしか攻撃できない場合は1対1である。さらに、これらは左に1〜2コラムシフトされるので、実際は1対3〜1対1の間で戦闘することになるだろう。3コラムシフトできる集中砲撃マーカーもゲーム中7個登場するが、全てをハリコフに指向することは難しいだろう。
 すると、全力攻撃を行っても防御側には最大2ステップ(1ユニット分)の損害しか与えられない。これに、ドイツ軍の歩兵補充能力とソ連軍の攻撃可能ターン数、ハリコフの町の大きさ(ソ連軍は7ヘクス全てを占領しなければVPを獲得できない)を掛け合わせれば、ソ連軍が全ての航空ユニットを毎ターン投入したところで、ハリコフ攻略など夢の話であることは明らかである。
 それでは、戦車部隊を大量投入すれば…という考えが思い浮かぶ。戦車ユニットの4枚スタックの1ヘクス当たりの戦闘力は平均20前後である。投入すれば、ハリコフ攻略はごく近い現実のものとなるだろう。しかし、ドイツ軍の10個もの装甲師団(増援含む)の相手は誰がするのだ?ソ連軍が全ての戦車ユニットをハリコフに向ければ、ドイツ軍もハリコフ防衛に装甲師団を参加させるだろう。結局はいたちごっこである。
 次は戦車ユニットの半数を南方突破に、残りをハリコフに向ける作戦が考えられる。しかし、これこそ全くの愚策であり、指揮官として最も否定すべき行動である。これは、戦力を分散させるだけでなく、ドイツ軍に対する戦車ユニットの数的優位  イニシアティブ  をも失う結果になる。
 それでは、ハリコフ攻略の可能性はどこに見出せばよいのか?それは、史実通りハリコフ西方からの早期突入にあると思われる。ドイツ軍の防衛力が整わないうちに背後を突き、戦線に対峙する部隊と呼応して包囲殲滅するのが理想である。ヴォゴダホフからハリコフに伸びる道路が鍵を握るだろう。
 ヴォゴダホフ占領した時点でドイツ軍に隙があれば、その一部をハリコフに向かわせよう。戦力の分散は愚策と前述したが、それはハリコフ防衛が整っている場合の直接アプローチの話であって、この場合は敵の後背を突く電撃戦の好例と言えるだろう。

ソ連軍の南方突破は可能なのか?
 ハリコフ攻略の可能性は低いと言う結論が出た。そうなると、次は南方突破が問題となる。ソ連軍戦車部隊の南方突破は可能なのか?
 これも普通に考えれば、難しいようである。
 まず、地図盤の南西部分を見てみよう。地図盤最北端から南下してきたソ連軍戦車部隊はクラスノグラード以西の地図盤南端を目指すわけであるが、ここには河川と森が巧妙に配置されていることに気付くだろう。河川はちょうど袋小路のようになっている。実際にプレイするとわかるのだが、ソ連軍は横に広く展開することができないのである。彼らはドイツ軍戦車部隊に対する数的優位を完全に生かしきれず、細い回廊を縫うように進撃することを余儀なくされる。
 一方、ドイツ軍はその穂先を包み込むように、そしてソ連軍に先手を撃たれないような有利な位置を確保して待ち構えていることだろう。ドイツ軍戦車部隊は、道路と戦略移動を利用して、迅速に対応できるからである。
 また、ゲーム中盤のソ連軍が突破を試みる時点での戦車兵力はドイツ軍のそれの約2倍であるが、戦車戦戦闘値はケタ違いにドイツ軍の方が大きい。それは、ソ連軍の絶対的優位を脅かすには充分な戦力なのである。
 ソ連軍はこの決戦を勝利しないまでも有利にすすめることができれば、南方突破も夢ではない。しかし、限定された進撃路とドイツ軍の戦術的優位という壁が大きく立ちはだかっている。そして、それはあまりにも大きすぎると思うのだが…。

ドイツ軍の戦略
 『リング・オブ・ファイア』は戦車戦のゲームである。ドイツ軍プレイヤーは常にソ連軍戦車ユニットの移動力を計算しながら、防衛線を移動させていく。
 それらのほとんどは、ゲーム開始時の初期配置ヘクスからマップ中央のヴォゴダホフを目指し、それを占領した後に盤外突破、またはハリコフ突入と言うのが一般的な進撃路である。一方、足の遅い歩兵部隊は北、東、南の3方向からゆっくりとハリコフ包囲の輪を縮めていく。本誌11号のアフター・アクション・レポートがプレイングサンプルとして、理解の一助になるであろう。
 ドイツ軍にはいくつかのポイントがあるので、少し述べていきたい。
 ソ連軍の攻勢:よく研究されたソ連軍の攻勢は、一定の規則性を持っている。特に予備移動で包囲されないように注意しよう。孤立した状態で除去されたユニットは二度と盤上には戻ってこないのだ。
 一般に、最も戦果を期待できる2930〜2932ヘクス、Stavgorodok、Boramylaの3方面のいずれか、または全てがソ連軍の突破地点になることが多いようである。ちなみに4ケ所以上から突破すると、ソ連軍は戦車兵力が分散してしまって攻勢を維持できないことが証明されている。
 後退:ゲーム序盤の後退は、思い切って戦略移動でソ連軍に攻撃されないところまで撤退する勇気が必要である。1ターンの間攻撃されないので、かえって戦力を温存でき、防御線をより強固なものにすることができる。ただし、早いうちにウディ河を渡河されるのはよくない。ここは踏ん張ってほしい。
 いつ後退するのかと言う疑問は、戦略的なセンスが問われるところである。当然、包囲される前や予備を抽出する時に行うのだが、ただ下がるだけでなく足留め部隊や航空ユニットをうまく使って、ソ連軍の進撃も鈍らせる工夫が必要になる。初心者は何度もプレイして(そして何度も負けて)、体で覚えてもらうことになるだろう。
 予備兵力:防御予備兵力は多ければ多いほどよい。ただし、戦闘結果は最高でも6ステップまでしか与えられないので、4ユニットのスタックは1ターンの攻撃をほとんど受け止めることができることを覚えておこう。
 戦線後方に予備ユニットを置くことによって、ソ連軍プレイヤーに無言のプレッシャーを与え続けることができるし、航空ユニットを戦闘ヘクスの交通妨害に使ってくれる。戦線後方の戦略移動は妨害されず、戦闘時もコラムシフトされないので、結果的に戦力を温存でき、部隊の整備もスムーズに行えるのである。早目の後退で、常に戦線全体に予備を点在させるのがよいだろう。
 ヴォゴダホフの重要性:ヴォゴダホフがなぜマップの中央に位置しているのか? これはただの偶然ではない。この町はソ連軍戦車部隊の中継点であり、ハリコフの裏玄関なのである。第4次ハリコフ戦の第2幕はこの町から始まるのだ。
 かといって、ドイツ軍はこの町に固執すべきではない。消耗戦は避けるべきである。まさしく「町よりもユニットのほうが大事」なのである。ここを失った時点でハリコフ西方の蓋がきちんと閉まっているのが理想である。
 反撃:装甲師団はいつ攻勢に転じるのか? ドイツ軍はターンを重ねると増援を得て、かなり戦力が充実してくる。しかし、攻撃したい気持ちをグッと抑えて、ソ連軍戦車部隊の矛先がどこに向くかわかるまで温存すべきである。この攻撃に失敗は許されないのだ。しかし、受け身に立ってはいけない。第一撃はドイツ軍から行おう。また、偵察ユニットのオプションルールをうまく利用すれば、少ないユニットで側面を守ることができる。

『リング・オブ・ファイア』の真の評価とは?
 『リング・オブ・ファイア』の本当の戦いは、ハリコフ防衛戦から始まる。ある程度戦線を下げたドイツ軍は防衛力が安定する一方、ソ連軍はスタック制限のためにその多くが遊兵と化し、効率の悪い部隊運用を強いられる。
 ドイツ軍は逃げ、ソ連軍は追いかける。ドイツ軍が本格的なハリコフ防衛に入るまでにミスをすれば、ソ連軍の勝率はグッと上がるだろう。予備戦力をうまく使ってドイツ軍ユニットを包囲し、補給線が繋がらない状態で戦闘を仕掛けるのだ。
 機械化ユニットの移動力が大きいので、ダイナミックな機動戦を体験できるのも魅力の一つである。特にドイツ軍は道路と戦略移動を最大限に利用できれば、ポルタワからハリコフまで移動することができる。
 ルールブック巻末にヒストリカルノートが載っているので、大いに参考にして頂きたい。都市や町にはヘクス番号が併記してあり、日付も明確にされている。ターン数を計算しながら実際にマップに目をやっていけばよいだろう。
 『FIRE&MOVEMENT』100号では、デビッド・W・ニコラス氏が『リング・オブ・ファイア』の紹介に際して、「プレイバランスはソ連軍に非常に有利である」と言及している。地図盤左側(西部分)は要塞線が少ないためにソ連軍の攻勢を阻止できず、盤端から突破を許してしまうと言う見解である。
 しかし、同じページにジョン・デッシュ氏の意見が掲載されている。その答えは「私はそうは思わない」。ドイツ装甲師団は、ソ連軍の前進を十分にくい止めることができると言うのだ。ゲーム終盤には地図盤南西端、またはハリコフ方面からのドイツ軍の反撃によって、盤上のソ連軍戦車ユニットは半分位になるだろうとも書いている。
 こうした意見があるにもかかわらず、『リング・オブ・ファイア』の評価はどのゲーム雑誌を見ても非常に高い。共通して言えることは、ルールが簡潔でプレイアビリティが高いものの、第4次ハリコフ戦の特徴を余すところなく引き出している点である。
 『カナディアン・ウォーゲーマーズ・ジャーナル』41号でキース・マーティンスとデイブ・ブリザートの両氏は「我々が今まで見たシミュレーションゲームの中で、ベスト“ゲーム”の一つである」と語り、『ゾーン・オブ・コントロール』誌1号では、ルール、ゲーム性が最高の“エクセレント”、革新性、プレイアビリティ、シミュレーション性はそれに継ぐ“グッド”が与えられている(4段階評価)。
 筆者もゲームメカニクスは絶賛に値する出来と評価する。また、戦略目標が明確にされているため、初心者にもプレイしやすいものとなっている。しかし、プレイングはプレイヤーのレベルを問わず、しばしば厳しい決断を迫る。圧倒的なソ連軍に立ち向かうドイツ軍の前途は厳しいのだ。
 筆者と『リング・オブ・ファイア』の最初の出会いは2年前の春のことであった。その時は、その場でルールを教えてもらったインスタント・プレイだったためか、今一つゲームの本質を理解することができなかった。
 しかし、今は違う。何度もルールブックを読み返し、机に地図盤を広げ、ユニットを滑らせ、腕を組んだ。あらゆる角度からゲームを見て、結論を出したのである。
 戦車戦の緊張感はたまらない。まさしく、真昼の決闘さながらである。プレイ中に心臓が高鳴ったこともあったほどだ。
 ジョン・デッシュ氏のゲームコンセプトとデザインテクニックは私を魅了して止まない。彼は作戦レベルのゲームの中に戦術レベルの戦車戦を再現するのが非常にうまい。自らの軍隊体験とこれまでの惜しみない研究の成果であろう。『リング・オブ・ファイア』では、戦車と言う兵器の重要性が余すところなくシミュレートされている。
 そう、一度プレイしてみれば『リング・オブ・ファイア』なくして、近年のシミュレーションゲームは語れないと思うのは私だけではないはずだ。
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更新日 : 2000/08/17 .