第4次ハリコフ戦−クルスク戦後の戦車戦

『<MiH>Ring of Fire』アフターアクションレポート (11号)


 今号のアフター・アクション・レポートは、本誌でもお馴染みのウルリヒ・ベルネマン氏率いるモメンツ・イン・ヒストリー社の『リング・オブ・ファイア』である。
 モメンツ・イン・ヒストリー社はドイツの新興ゲームメーカーで、1994年春にガザラの戦い  1942年の北アフリカ  を扱った『Triumphant Fox』をリリース、その3ケ月後にゲーム史上初めて第4次ハリコフ戦を扱ったシミュレーションゲーム『リング・オブ・ファイア』を世に送り出し、ちょっとした話題を呼んだ。
 『リング・オブ・ファイア』は残念ながら現在は絶版と言う話だが、来春には本誌の付録ゲームになるらしいので、読者の皆さんは楽しみにしていて頂きたい。

ゲームデザイナーの素顔
 『リング・オブ・ファイア』はゲーム歴25年のベテラン、ジョン・デッシュ氏の手によってデザインされた。氏はこれまでにも、本誌3号付録の『ベルリン´45』や『ブダペスト´45』(いずれもXTR社)などのデザインを手掛けている。来春には『The Bulge:A wave of Terror』というバルジのビッグゲームを発表することだろう(これまたXTR社である)。フルマップ2枚、ユニットは中隊規模で、ルールは『ベルリン´45』のシステムを流用/発展させたものらしい。
 デッシュ氏は12年間、アメリカ陸軍で兵器士官として勤務  ドイツで戦車小隊長も経験している  していたこともあって、戦車という兵器にはこの上ない愛着があるようである。シミュレーションゲームの他にもミニチュアが大好きということだが、なぜか納得できてしまう。
 現在はコーネル大学で働いている。

関連書籍
 『リング・オブ・ファイア』に関する記事は、本誌1号の新作情報、本誌9号のショート・ラウンズにわずかながらも見ることができる。すでに目を通されたことと思う。 また、本誌9号の「ソ連軍の攻撃戦術の進化」と山崎雅弘氏執筆の「ゲームに見るハリコフ戦」は非常に興味深い。
 WW・東部戦線のバイブル、パウル・カレル著『焦土作戦』には、第4次ハリコフ戦は10ページに渡って記述されている。
 結局のところ、ルールブック巻末にあるウルリヒ・ベルネマン氏の「ヒストリカル・コメント」が最も参考になる(当然と言えば当然である)。わずか2ページではあるが、都市名などはヘクス番号が併記され、なおかつ詳細にまで言及しているので、非常に有用である。平易な文章なので、英語が苦手という方にもチャレンジして頂きたい。

コンポーネント
 北を上にした22×34インチのマップ(2q/ヘクス)には、中央右下にハリコフ、その右にドネツ河が南北に走る。このハリコフ〜ドネツ河間にはハリコフ市内のものも含めて4〜5重の要塞線が描かれている。
 ユニットは360個と少なめで、ソ連軍狙撃兵は師団、ドイツ軍擲弾兵は連隊、ソ連軍戦車部隊は旅団、ドイツ軍戦車部隊は連隊司令部が指揮するカンプフ・クルッペ(戦車+装甲擲弾兵+工兵etc.)の規模となっている。
 戦車ユニットには新型のパンテルやティーゲル、T−34などの側面図が見事に描かれている。ただ、ソ連軍親衛隊ユニットが金色(といってもカーキ色にしか見えないが……)に色分けされているというのに、ドイツ軍のSS部隊は黒色になっていない!!日本語版では、ぜひとも黒くしてもらうことにしよう。
 他にも、航空ユニットのイラストがGMT社『LOST VICTORY』と同じなので、笑えてしまう。

第4次ハリコフ戦
 恐らく、ほとんどの方が第4次ハリコフ戦をご存じないと思われるので、この場を借りて簡単に歴史を追ってみる。
 
   1943年7月13日、起死回生を計ったドイツ軍の「チタデレ」作戦  クルスク突出部の戦い  は失敗に終わり、彼らはゆっくりと後退を始める。
 8月1日、マンシュタインはソ連軍の次の目標はハリコフと予測するが、赤軍が本格的な攻勢を開始するのは数週間後と考える。マンシュタインはここで過ちを犯した。赤軍のハリコフ奪回作戦  「ルミヤンツェフ」作戦  は8月3日午前5時に発動されるのである。
 ヒトラーはトルコやブルガリアに対する政治的思惑から、ハリコフにいたラウス将軍に死守命令を出す。また、赤軍がハリコフを突破、ドニエプル河を渡るようなことになれば、マンシュタインの南方軍集団はもとよりクリミヤ半島にいるクライストのA軍集団まで孤立してしまう。
 戦闘は激烈を極める。ソ連軍は数度にわたってハリコフに突入に成功するが、経験豊かなドイツ兵たちの奇跡的な活躍によっていずれも駆逐される。
 ハリコフはいまだドイツ軍の手中にあったが、マンシュタインはヒトラーの死守命令に対し「1個軍を失うくらいなら、1都市を失ったほうがましだ」と参謀長ブッセに語る。彼はスターリングラードの教訓を忘れてはいなかったのである。
 8月22日午前11時、ドイツ軍は廃墟と化したボリシェヴィキの街から撤退を完了した。4度に渡ったハリコフの戦いは幕を閉じたのである。
 
 第4次ハリコフ戦において、赤軍はハリコフの奪回に成功しただけでなく、ドイツ軍の残存戦力と貴重な予備部隊を奪ったことでも意義があった。とりわけドイツ軍の装甲兵力の損害は著しく、この影響によって彼らはさらに西のドニエプル河まで撤退を余儀なくされるのである。
 この戦いに置ける両軍の参加兵力はソ連軍871000人/戦車2832輌、ドイツ軍200000人/戦車210輌と記録されている。
 ソ連軍はこの戦いで500輌以上の戦車を失うが、ドイツ軍の損害も深刻なものであった。例えば、撤退完了後の8月23日のドイツ軍第19装甲師団には、760名の兵士と12輌の戦車しか残っていなかったのだ。

アフター・アクション・レポート
 『リング・オブ・ファイア』のプレイタイムはキャンペーンで8時間(メーカー発表)と手頃で、筆者のようなサラリーマンゲーマーでも、休日を利用して手軽にプレイできるところが嬉しい。両軍プレイヤーが実際に扱うユニット数も100個前後である。
 勝敗は、ゲーム終了時に都市の占領とユニットの盤外突破によって両軍が獲得するVPで決定される。ドイツ軍の獲得したVPはソ連軍のVPを差し引く形で、50以上ならばソ連軍、44以下ならばドイツ軍の勝利である。45〜49は引き分けである。
 今回は筆者がドイツ軍を担当する。

それでは初期配置から……
 初期配置はソ連軍歩兵ユニット、ドイツ軍の全てのユニット、ソ連軍戦車ユニットの順に配置される。この時、ドイツ軍は一番外側の要塞線、ソ連軍はその周囲(3314〜0133)をユニット、またはZOCリンクで埋めなければならないと規定されている。また、ソ連軍戦車ユニットのほとんどはドネツ河以西に配置しなければならない。
 このZOCリンクのために、両軍は長い戦線を維持するのに1ヘクス間隔でユニットを置いていかなければならない。特にユニットの少ないドイツ軍にとって厳しい制限である。

ドイツ軍の方針
 ソ連軍は強力な親衛軍所属ユニットの全てをドネツ河以西に配置、そしてBelgorodからStavgorodokの間の3ヘクス平地の隙間に戦車部隊のほぼ半数を集中してきた。ここが最も容易に突破できる地点だからであるが、恐らく、これらはUdy河に沿って南下し、Bogodukhovから南方への盤外突破、そしてハリコフの包囲を目指すと思われる。そうは言っても、ドイツ軍には圧倒的に兵力が足りない。早め々々の撤退で戦力の温存を計り、後半ハリコフの防衛に全力を尽くすことくらいしかできない。
 しかし、装甲部隊は早いうちから積極的にソ連軍戦車部隊と対決させることにする。数的不利も僅差であれば、どんどん投入していこう。戦車戦ならば負けないのだ。
 中盤から増援される装甲師団は、ソ連軍部隊の南方からの盤外突破を阻止するのに一役買ってもらう。その時点で戦況が有利に展開していれば、敵の側面を叩くべく果敢に攻めることにしよう。
 予備マーカーは便利そうにみえるが、実は非常に不便である。マーカーが下の予備ユニットを隠してしまい、相手プレイヤーがその戦力を把握できないからである。今回のプレイではユニットを逆向きに置くことで予備を表わすことにした。

 

シークエンス手順
 『リング・オブ・ファイア』は1日/ターンのスケールで、両軍とも以下のシークエンスを繰り返して14ターン、つまり2週間(8月3日〜16日)を再現している。


 A.補充フェイズ
 B.通常移動フェイズ
 C.通常戦闘フェイズ
  1.戦車戦セグメント
  2.航空爆撃セグメント
  3.通常戦闘セグメント
 D.予備移動フェイズ
 E.予備戦闘フェイズ
  1.戦車戦セグメント
  2.航空爆撃セグメント
  3.通常戦闘セグメント

※予備移動/戦闘フェイズ:移動フェイズで移動力を半分以下しか消費せず、かつ敵ZOC(ZOCリンクではない)に存在していないユニットは予備になることができる。これらのユニットは予備移動フェイズに移動力の半分で移動でき、予備戦闘フェイズで戦車戦や戦闘を行える。

 

 

それでは始めよう
●第1ターン  ソ連軍の奇襲
 このターン、ドイツ軍は予備ユニットをソ連軍に攻撃されるヘクスに投入できないと言う奇襲効果がルールに規定されている。やられ放題のわけだが、要塞線のおかげで損害は被るものの全戦線にわたって壊滅的打撃を受けるようなことはない。
 6枚のソ連軍航空ユニットは全て爆撃を行い、Trostyanetsの7PZのティーゲルが除去、Tomorovkaの19PZのパンテルがステップロスする。こんなにあっさりとやられてしまうとは……。うーむ、前途多難である。
 そして、あちこちでカチューシャの花火が夜明けの空を切り裂く。『リング・オブ・ファイア』では、この当時のソ連軍の強力な集中砲撃はマーカーで表わされている。その効果は3コラムシフトとドイツ軍要塞の効果無視である。
 結局、Stavgorodok 、Boramyraを占領され、最も脆弱なBorisovka 北の平地ヘクスからはVorskla河岸までソ連軍戦車部隊が突破してきた。ドネツ河でもVolchanskの橋を確保されてしまった。
 ドイツ軍は予定通りVorskla 河沿いの要塞線まで後退する。しかし、Borisovka 方面から突破してきた7枚の戦車ユニットには6、11、19PZをもって反撃する。
 『リング・オブ・ファイア』では通常戦闘の前に戦車戦が行われる。これは両軍の戦車ユニットに記載されている戦車戦戦闘値を用いてサイコロを振り合うのだが、この結果は即時適用される。そして、サイコロを振る順はこの戦闘値の大きいユニットからである。ドイツ軍のパンテル、ティーゲルは4、4号戦車は2、ソ連軍のそれらは1である。ソ連軍戦車は、攻撃されて生き残ったユニットだけがサイコロを振ることができるである(しかも、全然当たらない……)。当時のドイツ軍戦車部隊の圧倒的な戦術的優位は、やはり相当なものだったのである。
 そして、ソ連軍部隊の戦力の弱ったところを通常戦闘で追い討ちをかける。戦車ユニットは戦車戦を行っても、続く通常戦闘に参加できるのだ。
 通常戦闘はオーソドックスな戦闘比であるが、その結果は全てステップロスで適用される。そして、戦闘比を計算する際の端数は全て切り上げられる(!)。両軍とも全力攻撃を宣言して、戦闘結果を倍にすることもできる。もちろん、両軍の戦闘結果が倍になるのである。
 これらの戦術的要素を多分に含んだ戦闘ルールは非常にエキサイティングで、大戦末期の東部戦線の膨大な損失を伴う戦いをシミュレートすることに成功している。
 この戦闘で、戦闘後前進によっていささか突出した形になっていた7枚のソ連軍戦車ユニットは、ドイツ空軍の対地支援をせいもあって全滅した。

●第2ターン  後退を続けるドイツ軍
 ソ連軍の猛攻は続く。このターンはGolovchinoとTrostyanets を占領された。特に、Golovchino方面ではぽっかりと穴が開いてしまった。ドイツ軍はソ連空軍の巧みな交通妨害で、思うように予備を投入できなかったのである。
 このため、ドイツ軍は戦略移動で、さらにBelgorodからUdy河沿いを走ってMurafaまで繋がっている要塞線まで戦線を下げる。
 移動力が2倍になる『リング・オブ・ファイア』の戦略移動は、移動開始時に敵ZOC内のユニットでも、それ以降敵ZOCに進入しなければ可能と規定されている。一方、敵支配地域では戦略移動できないので、ソ連軍は通常の移動で進撃するしかないのである。
 南へ通じる門戸Bogodukhov周辺には11PZといくつかの歩兵ユニットを、その他の交通の要衝には足留め部隊を配置する。
 3枚ある航空ユニットもBogodukhovの前面に並べて配置して、交通妨害を行う。ドイツ軍は少しでも時間を稼がなければならないのだ。
 また、7PZがいささかの損害を被りながらも戦車戦で勝利し、Trostyanets の奪還に成功する。

●第3ターン  陸のアルマダ
 ソ連軍歩兵ユニットはドイツ軍の後退するスピードに追いつけない。ドイツ空軍の交通妨害と前述の戦略移動、そして要所々々に置き去りにされた足留め部隊のせいである。しかし、足の速い戦車部隊はアルマダを形成して、戦線のなくなったGolovchinoからBogodukhovすぐ近くまでへ南下して来ている。
 そして、ソ連軍は全力でTrostyanets 方面で攻勢を開始してきた。矢面に立ったのは7PZであった。
 この7PZ、航空爆撃でパンテルが除去され、その後の戦車戦ではまさかの敗北を喫する。ソ連軍に損害を与えることなく、2ステップロスを被ってしまったのだ。そして、続く通常戦闘であえなく全滅してしまう。
 ソ連軍は、予備戦車部隊に戦線を突破させ、それらはAkhtyrkaまで達した。
 しかし、ドイツ軍も手をこまねいては見ていない。この方面に、新たに19PZを投入する。彼らはここでも敵を撃破、Akhtyrkaは再びドイツ軍の手に帰る。
 また、ソ連軍戦車部隊の南下を警戒してドネツ河の要塞線を放棄、戦線を縮小して予備を抽出、ハリコフ西方のUdy河沿いにユニットを配置する。
 装甲師団もBogodukhovを数個の歩兵ユニットに任せ、ソ連軍戦車部隊の行動範囲外に離脱させた。

●第4ターン  Akhtyrkaの激戦
 ソ連軍はBogodukhov攻略に乗り出す。といっても、数個の歩兵ユニットを除去するだけであっけなく終わってしまう。
 その西方では、ようやく戦闘位置についたソ連軍歩兵部隊がUdy河沿いの森や街に造られた堅固な要塞線に手こずっていた。
 一方、ドイツ軍は19PZに続き、増援のGD装甲師団をもAkhtyrkaに投入する。壮絶な戦車戦では、ドイツ軍は損害を被ることなく、ソ連軍戦車部隊に合計6ステップの損害を与えた。

●第5ターン  第19装甲師団全滅
 このターンにソ連軍航空ユニットが2枚撤退する。残りは4枚である。しかし、ドイツ軍に対する圧力は軽減しない。
 Akhtyrkaではあいかわらず激しい戦いが続いている。ソ連軍歩兵ユニットがVorskla 河対岸から包囲しようと延翼運動してきた。そして、正面の戦車部隊の集中攻撃で戦力の半減していた19PZが全滅してしまった。
 ドイツ軍はハリコフ北方の要塞線を放棄、戦線をさらに後退させる。戦線の長さがゲーム開始時より半分以下になったので、濃密な防御ラインを形成できるようになった。特に西方からのソ連軍戦車部隊の攻撃に備える。
 このターン、SSDRと3PZの2個装甲師団が増援で登場した。ここで、現在の装甲師団の位置を確認してみよう。Akhtyrkaを守備していたGD装甲師団は後退して、Zerkovで西方への盤外突破を警戒している。SSDRはポルタワに、3PZ、6PZ、7PZ、11PZはValki周辺に集結して、南下してくるソ連軍戦車部隊を迎え撃つ態勢を整えている。

●第6ターン  機動戦の始まり
 『リング・オブ・ファイア』の本当の楽しさを味わえるのは、これからである。マップ右側では戦線の膠着したハリコフ包囲戦、左側では戦線のない広野で両軍戦車部隊の激しい機動戦が繰り広げられる。この機動戦では、両軍戦車部隊が一定の距離を保ちながら、互いの隙を窺うと言うシビアな駆け引きが展開される。この緊張感は一度味わうと癖になりそうだった。
 巷では『リング・オブ・ファイア』がドイツ軍必敗のゲームと噂されているようだが、筆者は決してそうは思わない。いや、むしろドイツ軍の方が有利に思えてならない。
 このターンのドイツ軍はゲーム開始時の3個、これまでの増援で3個の計6個装甲師団を保有するだろう。いや、しなければならない。そして、できるはずである。さらに第7〜8ターンに2個装甲師団が増援される。
 戦車戦は完全にドイツ軍に分があるので、これだけの戦力があれば南方への盤外突破は阻止できる。増援の歩兵ユニットと偵察ユニット、そして空軍ユニットの交通妨害を巧みに使って側面を守れば、必ずやソ連軍戦車部隊に突破力を失わせる程の大打撃を与えられるはずである。
 そして、その勝利はAkhtyrkaやBogodukhovの奪還に繋がるのである。
 今回のプレイでは、Bogodukhovにいる大量のソ連軍戦車部隊は全てが南西方向に移動してきた。ちょうどPoltavaとValkiの間である。
 彼らは巧みにZOCリンクを形成しているので、ドイツ軍装甲部隊は迂闊に手を出せない。たしかに戦闘を挑めば勝てるだろう。しかし、ソ連軍ユニットが下手に生き残ってしまうと、その次のターンに逆包囲されてしまう危険もある。かと言って、せっかくの装甲師団を戦線を張るためとはいえバラしては使えない。
 結局、装甲師団は距離を保ちつつ西に移動させるだけにした。そして、3枚の航空ユニットをソ連軍戦車部隊の目の前に並べて、移動を妨害する。

●第7ターン  ドイツ軍の賭け
 もはや、戦車部隊を全て南に向けたソ連軍にハリコフを奪取する力はない。盤外突破に全てを賭けたようである。
 戦車部隊は全速力で南下する。一番外側に1ユニットずつのZOCリンクを形成して周囲を警戒させている。その先頭はハリコフとPoltavaを結ぶ道路にまで進出してきた。 この頃、歩兵ユニットもAkhtyrkaとKolontayevkaから、それぞれ西に向けてVorskla 河を渡河しようとしていた。
 ドイツ軍はもうこれ以上待てない。増援のSST装甲師団が突破口を穿ち、4個装甲師団を一列に並べて、予備戦闘フェイズに戦車戦を挑んだ。側面は各装甲師団の偵察大隊に守備させている。ここで負ければ、逆包囲されてしまうだろう。
 航空ユニットは対地支援に使いたいところだったが、西方から突破を計るソ連軍歩兵ユニットに対して交通妨害を行った。
 この戦闘による損害はドイツ軍2ステップ、ソ連軍14ステップ。ドイツ軍装甲師団が接敵した2スタックのソ連軍戦車ユニットの全てが、全滅ユニットボックスに行った。

●第8ターン以降  ソ連軍の過ち
 Kolomak河とOrchik河の狭い通廊は両側を森に阻まれているので、ソ連軍は思ったように迂回行動をとれない。ソ連軍は目の前に立ち塞がった4個装甲師団の強力なスクリーンの突破は不可能と判断、Kolomak河の北を西に移動した。しかし、それは誤った選択であった。
 この結果、ソ連軍戦車部隊はPoltavaを目の前にして、東西と南の三方向から5個装甲師団に拘束されてしまう。この時点の両軍のユニット数の差はごく僅かでしかなく、ソ連軍戦車部隊が戦車戦で圧倒的な強さを誇るドイツ軍装甲師団に対抗できるとは思えなかった。
 結局、この戦いで受けた損害が後々まで尾を引き、ソ連軍の進撃を頓挫させ、プレイヤーのモラルまでを崩壊させることになるのである。

総評
 『リング・オブ・ファイア』は対戦はもちろんであるが、ぜひソロプレイして頂きたいゲームである。ソリテアプレイアビリティ(ソロプレイ適性)が8段階中の8(メーカー発表)なのである。
 本誌を購読された方でも、職業柄休日に休めなかったり、地方に住んでいたりして対戦相手がいないために、まだ付録ゲームのユニットすら切っていない方がおられるのではないだろうか(たくさんいると思うのだが……)。ぜひとも、来春発売される日本語版を買って、実際にプレイして頂きたい。
 小さな子供のいる家庭では、マップをパズルのボードに乗せてプレイすることを薦める。こうしておけば、家を離れる間タンスの上など子供の手の届かないところに置いて、何日かに分けてプレイできる。これは数年前、筆者がアバロンヒル社の『パンツァー・グルッペ・グデーリアン』をソロプレイしている時に、よりにもよって黒いダス・ライヒユニット(3個しかないのに!)を子供に食べられた経験から編み出した技である。ちなみに、筆者は約80×60pのものを使っている。『コマンド・マガジン日本版』の付録ゲームのマップがほぼぴったり入るサイズである。
 アバロンヒル社の『第三帝国』のデザインを手掛けたジョン・ブラド氏はこう語る。 「シミュレーションゲームとは、ゲームデザイナーの意図するところを見つけ出し、その刺激を自分のものにすることにこそ喜びを見出すものなのである」
 そして、それを見出す最良の方法はソロプレイなのである。
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更新日 : 2000/08/17 .