イスラエル独立の戦い

付録ゲーム『イスラエル独立の戦い』ゲーム分析&プレイレポート (22号)


 「ホロコースト(ナチスによるユダヤ人虐殺)の唯一最大の教訓は、ユダヤ国家なしにユダヤ人の存在はありえない、ということだ」
 今年の4月22日、イスラエルのネタニヤフ首相がポーランドのアウシュビッツ強制収容所跡から行った演説を、世界中の報道機関が報じた。
 しかし、建国から50年が経過した今でも中東情勢は安定することなく、イスラエル建国が600万人のユダヤ人犠牲者に対する補償という議論も、政治的に利用されているにすぎない。
 翌日には「中東和平3者会談延期 追加撤退妥協案イスラエル拒否」という見出しが新聞を賑わした。
 日本でも杉原千畝の話を耳にしたことがあるだろう。当時、リトアニア駐在の外交官だった彼は、一存でユダヤ人難民にビザを発給し、多くのユダヤ人の命を救った。
 「苦慮、煩悶の揚句、ついに人道博愛精神第一、という結論に達した」と『決断』(大正出版)には書かれているが、外交官である彼からすれば、日本が世界的に絶大な影響力を持つユダヤ人グループに反発されることは得策ではないと考えたのは間違いない。日本通過ビザを持っているユダヤ人難民について、単に最終受け入れ国が決まっていないという理由だけで上陸を拒否するのは、発給国としての威信を損ないかねなかったのである。
 我々はゲームを通して、複雑な歴史の一ページをひもとくことができる。そして、新しい事実を知るはずである。ユダヤ人、アラブ人のどちらも、欧米帝国主義の被害者であることを。

ゲーム・デザイナーの素顔
 軍事に強い興味を持っていた高校生は、とある田舎のホビーショップでアバロンヒル・クラシック「ドイツ・アフリカ軍団」と「スターリングラード攻防戦」を手にする。彼がその魅力にとりつかれるのには、それほど多くの時間を必要としなかった。
 その後、自分の好きなゲームを全部足してもっといいゲームが欲しい、という単純で必然的な動機は、彼にゲーム・デザインの第一歩を踏み出させた。そして1987年、ジョン・バート氏と共同で『ニカラグア』を完成させる。当時、S&T誌の編集長だったキース・ポルターがチャンスをくれたのだった。
 彼がこれまでにデザインしたゲームは約20個、その中でも特に動きの遅いローマ軍と機動力に優れたParthians軍が好対照の状況を作り出している『Trajan』が気に入っていると語る。
 彼は古代戦を特に好む。その時代と我々の住む現在の間に、たくさんの類似点を見つけることができるから、というのが主な理由らしい。たとえば、1990〜91年の湾岸戦争では、彼はローマ軍と中東での米軍の作戦行動には少なくとも戦略レベルで共通するものがあったと語る。
 現代の政治戦を扱ったゲームも好み、現在では“現代戦のスペシャリスト”の異名を持つ。中でも自分でデザインした『Crisis 2000』と『LA Lawless』は最高の出来と評価する。どちらも本誌19号で紹介されている。
 彼のゲームは“Basic-Advanced”なゲーム・ルールを重用し、C3Iを重視する傾向を持つ。これが現在の“ウォーゲームの衰退”に対する良薬であることを信じているからだ。
 最後に彼は語る。
 ウォーゲームはたくさんのことを再評価できるホビーで、私は1970年代にSPI社のプレイ・テストで戦争の実体を学びました。
 ボード・ウォーゲームは情報を表現する道具であり、現実世界をより深く理解するためのツールとしてデザインするように心掛けています。なおかつ、対戦者同士の頭脳も競い合える、そして楽しめるゲームを作り続けなければならないということも忘れてはいません。
 ジョセフ・ミランダ氏は現在『Strategy&Tactics』誌の編集長を務め、現在最も数多くのゲームを発表しているゲーム・デザイナーの一人である。氏の豊富な知識と経験から生み出す独創的な視点は、シミュレーションゲームに新しい活路を開いている。

ゲーム・システムと作戦研究
 今回は、ゲームがやや複雑ということもあって、ゲーム・システムを主にイスラエル軍の視点から考究していくことにする。
 複雑な政治情勢:「イスラエル独立の戦い」は、現代戦が政治外交と密接な関係を持っていることを証明しているゲームである。
 ランダム・イベント・ルールは当時の状況をうまく利用して、ゲームのリプレイ・アビリティを向上させることに成功している。最近の新作ゲームの傾向として、ランダム要素が多すぎるきらいが見受けられるのだが、このゲームのそれは適度なエッセンスとなってプレイングをおおいに盛り上げてくれることだろう。
 代表的なものが国連による停戦勧告であり、当時のアラブ陣営の歩調の乱れを表すイベントである。アラブ連盟の多くが時代錯誤的封建的国家であり、国家間の内部的不統一に悩んでいたことを思い返せば、なるほどとうなずける。
 イスラエルにとっても、アルタレナ号事件のような内紛に頭を悩ますことがあるだろう。
 再編成の必要性:そして、多くのゲーマーがプレイ中に煩雑に思うのが、再編成のルールである。なぜ、統合/分割するのか? スタックしておけばよいのでは? いろいろと疑問が湧いてくる読者もいるかもしれない。
 そもそも、イスラエル軍は部隊の最大編成規模が旅団であり、特に大隊レベルにおける指揮の独立と各級指揮官のリーダーシップを強く必要とする戦術を採用していた(余談になるが、イスラエル軍将校団の合言葉は「突撃!」ではなく「俺に続け!」であり、世界で最も将校の死傷率が高いといわれている)。そして、この“最初”の戦争における参加各国の、部隊編成、練度、装備はどれをとっても、統一的基準を見つけられないほど多岐にわたっていた。この2点に再編成ルールの必要性が見出せる。
 イスラエルは計12個、エジプトは5個、シリア、トランス・ヨルダンは3個、イラクは4個の旅団編成が可能である。これらの数は、各国のコマンド・コントロール能力、および将校と下士官の能力を総合的に表したものであり、また再編成時にユニット数の上限を設けることで、各国の軍事能力の限界をシミュレートしている。
 これらは、イスラエル軍の質とアラブ軍の量という両軍のソフト、ハード両面の特徴を引き出す格好のシステムと言えるだろう。
 特集記事にも両軍の部隊編成に関する興味深い記述が見受けられるので、ぜひ参考にしていただきたい。
 戦争を左右するもの:多くのゲームが抽象的な補給線を設定するのに比べ、『イスラエル独立の戦い』では“補給”がユニット化され、実際にマップ上を移動する。史実でも、ゲリラ的に輸送部隊が襲撃される事件などもあったのでこういった処理をしたのかというと、どうやらそれだけではなさそうだ。いや、そんなことよりももっと重要なものがあった。
 万能な補給ポイントは移動力、戦闘力を倍増させ、回復、塹壕、昇格のすべてに必要な総合的な物資を表している。
 特に戦闘では、その有無が戦闘結果を大きく左右する。たとえば、アラブ・リージョンの12-8機械化旅団の2個スタックが攻撃で戦闘補給を消費すると12×2×4=48戦闘力になる。イスラエルにしてみれば歩兵旅団が8戦闘力しかないので、この数値は脅威である。
 しかし、核心はそこではない。
 派手な戦闘ではなく、移動に関するルール群こそが、補給ルールと密接な関係を持っているのだ。『イスラエル独立の戦い』では、行軍移動とオーバーラン、浸透移動の三つのルールが補給ルールががっちりと腕を組むことで、柔軟な機動戦を見事に再現している。
 補給さえあれば、2倍のスピードで敵の戦線を突破し、2倍の戦闘力で後方を攪乱し、必要ならば回復さえも行える。
 当時、火力では圧倒的に優勢なアラブ軍に対抗するために、イスラエルは夜間浸透戦術を用いた。近接戦闘では支援火力は決定的な重要性を持たないからだ。そして、これが移動における弱ZOCの効果を引き出していると考えられる。
 航空作戦の意義:真珠湾奇襲以来、現代における戦争は航空兵力がその趨勢を左右してきた。当然のことながら、『イスラエル独立の戦い』でも、航空兵力は簡素なルールで構成されているにもかかわらず、戦局を大きく左右する重要なポジションを占めている。
 各国航空部隊は各種任務を行えるようになっているが、ここでは特に「補給破壊」をあげることにしよう。
 前述したように、補給ポイントは絶大な意味を持ってユニット化されている。このため、敵主力に対する攻撃は地上軍と連携した近接航空支援を行うのがセオリーとなる。ただし、戦場の霧がうまく再現されているので、補給ポイントの在処はわかりにくい。ただ、決定的な防御地点には必ず隠れているはずだ。
 こうなると、制空権の確保がクローズ・アップされる。両軍の航空兵力は常に拮抗した状態にあるので、その運用は慎重に行うべきである。特にアラブ側は国籍によるスタック制限のために、各個撃破されやすい。ユニットの少ないうちに航空戦を挑む方がよいかもしれない。
 ジョセフ・ミランダのC3I:「多くの人々が見逃しがちなことは、指揮官の最大の問題は指揮下の兵士が自分の思い通りに動いてくれるかどうか、という非常に単純なものだということです。それに、敵は狡猾です。私は、戦争では情報が非常に重要だと考えています。」
 彼は『GameFix』のインタビューで、こう答えている。
 兵員数に劣るイスラエルは、敵スタックの中身を見れない戦場の霧を有効に活用しなければならない。そのためにはテロ活動を盛んに行うことになる。たとえば、ベツレヘム(4217)とデル・ヤーシン(4417)からアラブ勢力を駆逐しない限り、エルサレム新市街の情報がすべてアラブ側に筒抜けになるのだ。それは、アラブ・リージョンの計算された攻撃を招き、一度奪われた聖地は二度とユダヤ人の手の下に帰ることはないだろう。
 この戦時のテロ活動によって、推定百万人の難民が生まれたと言われる。これはパレスチナに住んでいたパレスチナ・アラブ人の約70%に相当する数である。

アフター・アクション・レポート
イスラエル軍の作戦方針
 東を地中海、三方を敵国に取り囲まれているイスラエルは、籠城している国家とも言える。わずか数十キロの幅しかない国土をいかに守り抜くかが焦点となる。
 エルサレムの支配が戦いの焦点となるのはすぐにわかるのだが、テル・アビブからの輸送ルートを確保(エルサレムに補給ポイントが登場できないことに注意)しておかないと、強力なアラブ・リージョンには対抗できない。ビルマ・ロードを作る必要が出てくるようならば、イスラエルはまず勝利することはできないだろう。ちなみに、ビルマロードをマップ上では4415〜4315〜4316〜4317(エルサレム新市街)のヘクス列をいう。
 アラブ軍の進撃は補給路を確保する必要性から、道路に沿って行われる。彼らにしても、補給線を設定する必要はないのだが、補給ユニットを速やかに前線に送り込む手段を確立しないと攻勢を維持できない。よって、おおむね史実通りの展開を見ることになるだろう。
 またゲーム上では、アラブ側は連携の重要性を認識しており、奇襲を生み出すエジプト軍の上陸作戦には常に注意しておかなければならない。

アラブ人のジハード(セット・アップ)
 アラブ軍が都市、交通の要衝を中心に拠点防御を展開するのとは対照的に、イスラエル軍はテル・アビブ周辺に部隊を集中させた。アラブ軍は撤退が予定されている英軍の要塞を占領、イスラエル軍はヨルダン川に架かる3ヶ所の橋梁を破壊がこの時点での最大の任務である。
 イスラエルの秘密武器工場は今回エルサレムに配置したが、アラブ軍の進撃に対応しにくい、言い換えれば補給を送りにくい北東方面に配置するのも有効な手段である。

ユダヤ人とアラブ人とイギリス人(1947年12月〜1948年4月)
 内線が勃発した期間を扱うこの時期において、イスラエルは来たるべきアラブ軍の進撃に抵抗できるだけの体勢を整えなければならない。
 次々と歩兵、機械化旅団を編成し、ハイファ全市を制圧、ヤフォ市の占領にも成功する。
 その後、テル・アビブとエルサレムの回廊を啓開すべく、アラブ勢力の掃討に全力を尽くす。ここでは、旅団のオーバーランが威力を発揮する。制圧は順調に行われ、2月には開通、歩兵旅団がエルサレム新市街に入城した。
 秘密飛行場はトランス・ヨルダンの北からの迂回に備えてMa'aleに建設、周辺のテロ活動を盛んに行い、情報漏洩を厳重に防ぐ。
 また、エルサレム新市街には陣地を構築した。
 一方、アラブ軍はこれらの行動にまったく手出しができない様子だった。北からのALAが唯一の抵抗戦力だが、ユダヤ人の町の2コラムシフトのおかげで進撃は遅々として進まない。
 反対の南では、エジプト軍がゆっくりと北上を開始する。
 アラブ側はその豊富な人的資源を有効に活用できず、4月までに16個大隊しか登場しない。しかも、まったく旅団にできないまま。一方、イスラエル軍は15個大隊が登場し、その中で5個旅団(うち機械化2個)を編成できる。
 最終的には、イーガル・アロン率いる歩兵旅団がエルサレム全市を占領、トランス・ヨルダン、シリア国境に架かる3ヶ所の橋の爆破も成功していた。
 アラブ軍ができたことといえば、撤退した英軍根拠地を抜け目なく支配することだけだった。しかし、アブデル・カデルはトランス・ヨルダン領内に避難し、アラブ・リージョンと再興の誓いを果たしていた。

オフィスの鍵は誰に渡すのですか?(1948年5月〜1948年7月)
 英軍は早々とノアの箱舟に乗りこんで、去っていった。
 そして、戦争準備が整ったアラブ4国がパレスチナになだれ込んできた。
 テル・アビブ〜エルサレム間の完全制圧の鐘が、激しいエルサレム攻防戦の幕を開けた。
 しかし、開戦直後の5月、イスラエル軍は一時的にではあったが、補給が各所で不足する事態が発生した。インパルスの増加で消費が増えたことと、アラブ軍航空部隊がイスラエル軍の補給を重点的に狙う作戦に原因があった。
 攻撃箇所の補給ポイントを枯渇させれば、アラブ側はそのヘクスにおいて戦術的優位を確立できる。また、回復できなかったイスラエル軍ユニットは、第2インパルスの攻撃において、かなりの確率で除去される運命にある。ただでさえユニットの少ないイスラエル軍にとって、これは致命的だった。
 アブデル・カデルとエル・テルの二人のリーダーの指揮の下、進撃を開始したアラブ・リージョンの2個機械化旅団は、補給不足に悩むイスラエル軍歩兵旅団を全力攻撃で壊滅させ、エルサレム旧市街になだれ込んだ。
 これで、一気にアラブ軍の士気が奮い立った。エルサレム旧市街の支配はそのVPだけでなく、アラブ・リージョンに死海に沿った南への回廊を提供することを意味する。つまり、エジプトとの協力が容易になるのだ。
 しかし、6月にはイラクが、7月にはエルサレム旧市街に突入したままのトランス・ヨルダンがイベントによって行動を起こさず、足並みが揃わない。
 イスラエルは4個旅団をエルサレム方面に展開し、2個機械化旅団を海岸沿いに北上してくるエジプト軍に向けている。北からやってくるイラクやシリアまでは手が回らないのが実状であった。

第一次停戦(1948年8月〜1948年9月)
 ようやく、国連が動いた。史実と同じように、イスラエルの危機を救うかたちで停戦勧告は訪れた。
 この間、各国は賢明に戦力の回復、拡充を図る。
 アラブ各国はパレスチナ国境に増援部隊と補給物資をどんどん積み上げていく。
 イスラエルはひたすら補給をため込んだ。開戦直後は部隊の再編成で多くの補給ポイントを必要としながら、アラブ航空部隊の補給破壊に散々やられてしまい、結果的に前線まで補給が行き渡らなかった戦訓を生かさなければならない。
 エルサレムではにらみ合いが続いているが、今後の戦いの行方はまったく見えなかった。

イスラエルの逆襲(1948年8月〜10月)
 停戦が解けた直後、史実通りイスラエルはエジプトを戦争から脱落させるネゲブ作戦を発動する。
 現在、Iraq Suweidanw付近で対峙しているのだが、テル・アビブとエルサレムに集中している部隊を容易に移動させられること、補給の便が良いことがこの作戦の発動理由である。地形も容易で防御には不向きときている。
 自然にこのような展開になるところなど、良くシミュレートできていて感心させられる。 イスラエル軍はこれも史実通り、イーガル・アロンを司令官に任命、機甲旅団を含む数個旅団に進撃を命じる。
 対するエジプト軍も3個旅団が集結していた。
 しかし結果は、イスラエル軍はエジプト軍歩兵旅団を壊滅させ、補給物資までも奪取した圧倒的勝利に終わった。
 国連の妨害で両軍の補給が一部カットされるイベントが発生したこともあり、最後は一定空間に投下できる補給の量が勝敗を分けた。イスラエル軍は1回の移動で補給ポイントを交戦地区まで移動させられるのに対し、エジプトは2回の移動、もしくは1回の行軍移動が必要だったのである。
 その間、エルサレムは要塞化してアラブ・リージョンの攻勢をしのいでいたのだが、彼らも補給と支援部隊が十分でないために攻勢を維持できずにいた。大隊クラスの部隊を迂回させてもすぐに妨害に遭ってあってしまい、逃げ帰ってくるか撃破されるばかりなのである。いくら強力な部隊を持っていてもそれを支えるものがなければ戦いには勝てない、現代戦が補給の戦いであることを如実に表す状況だった。
 また、これまでイスラエル軍が避けていたため大きな航空戦は起こっていないが、これからは本格的な航空撃滅戦を計画する。

第二次停戦(1948年11月〜12月)
 国連安保理事会は再び停戦決議を採択した。
 この時期になると、イスラエルの補給量はアラブ連盟軍のすべての国のそれを足したものよりも多くなっていた。

シャローム(1949年1月〜3月)
 停戦期間は3ヶ月だったが、イスラエルの奇襲で1ヶ月早く戦闘が再開された。
 アラブ軍はまさしく虚を突かれた。VPでもイスラエル軍が有利に立っていたので、まさかと油断していたのだ。
 この攻撃でエジプト軍は壊滅的打撃を受け、以後決定力を喪失してしまう。ここでしばらく、このままエジプト領まで進出するものかと悩んだが、ゲーム上の政治的な制限や北からのアラブ軍の脅威が増大していることもあって、あきらめることにした。
 この後、返す刀でアロンはガリラヤ地方でシリア、レバノン軍を撃破する。この背景にも、イスラエルの膨大な補給があった。なにせ、ユニットのすべての額面数値が2倍になったまま行動するのである。神出鬼没なイスラエル軍の活動は、カエサルのガリア戦役を彷彿させた。
 そして、この期に及んでも、今度はシリアとトランス・ヨルダンが足並みを乱す。もはや、末期的な症状を呈するアラブ軍であった。

アフター・アクション・レポート
 ゲームを終えて、まず第一に感じたことは「ルール・システムに無駄がない」ということである。付録ゲームという限られた枠の中で、ミランダは見事に第一次中東戦争を再現している。
 ダブル・インパルスのタイミング、よく考えられた各フェイズの配列順序(特にイスラエル軍の増援フェイズはアラブ軍の攻撃の後にならないとやってこない)などは妙味を得ている。
 1948年5月ターンにターン・シークエンスはダブル・インパルスになる。今回の対戦でこの時のイスラエル軍の補給事情は、かの有名な「イースト・フロント」でドイツ軍がブリッツをかけ過ぎた時の現象が起きた。
 独ソ戦時のドイツ軍のように、機械化部隊の高速度の進撃に対して、補給ポイントがついていけないこともアラブ側にはよく見られた(もちろん、補給ユニットに行軍移動させればよいのだが、彼らにそんな余裕はないと思われる)。
 機動戦が展開されうるルール構成と補給がユニット化されていることで、多くのゲームと異なり戦線の絶対的な必要性はなくなっている。とはいっても、移動=弱ZOC、戦闘=強ZOCのアンバランスな構成が、後方に展開されるべき予備部隊の重要性を認識できるようになっている。
 たとえば、戦線を突破されたとしても、後方に部隊がいれば続く自軍戦闘フェイズに攻撃(それは恐らく包囲攻撃になるだろう)できるのだ。
 また、移動のヴァリエーションの多さにも目を向ける必要があるだろう。ある一定距離の空間までの移動手段として、航空輸送、2回の通常移動、1回の行軍移動のいずれかを選択できる。すなわち、ゲーム上の部隊運用に柔軟性が備わっているので、プレイング・ヴァリエーションが飛躍的に向上しているのである。
 初期配置の手軽さはどうだろうか? わずか十五分である。その煩わしさから、ついついコンピュータに手を伸ばしがちだった読者も、これなら大丈夫だろう。
 いずれにしても、すばらしいシチュエーションの描写である。
 インターネットを覗いてみても、「ミランダはバランスの取れた、そして教育的で洗練されたゲームをデザインした。」というコメントを見ることができる。
 最後にルールに関する疑問を解決しようと思う。

・戦闘は攻撃側の戦闘比修正をすべて加算した後に、防御側の修正を適用する
・シリアは5月に2個旅団、6月に1個旅団が増援で登場するようになっているが、旅団ユニットは2個しかない。つまり、5月の登場直後の再編成フェイズに分割しておかないと、6月の歩兵旅団は登場できないのだ。

 パレスチナ分割決議の不条理、建国前のユダヤ側の激しい軍事行動や不正などで、アラブ諸国が怒るのはしかたがない。しかし、大いに話し合う余地があったと考えられる。しかし、世界が一つの統一国家になっていない今日の国際社会では、国家間の話し合いで、問題が片づかない時に、しばしば「力による強制」が起こり得るのである。
 イスラエル中央統計局の調べでは、移民国家イスラエルの人口は現在594万人(うちアラブ系112万人)と、建国時の7.4倍に膨れ上がっている。この中で、「サブラ」と呼ばれるイスラエル生まれは、すでにユダヤ人人口の6割以上を占めている。


戻る


ホーム

更新日 : 2000/08/17.